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海外研究員派遣(スタンフォード大学)

スタンフォード便りVol.4
 by 川口宗紀

こんにちは!わたしは現在、スタンフォード大学に客員研究員として在籍しています。今回は、スタンフォード大学での日常について、現在取り組んでいることを交えつつご紹介したいと思います。

1 派遣までの経緯

わたしはMTECで経済指標や企業財務データなどの数値データの分析に従事してきました。最近では、日中の株式売買データの分析に取り組んできています。日中の株式売買の履歴であるこのデータは一日当たり数千万件の量があり、かつ時系列的に連続しているデータであるという特徴を持ちます。また、市場参加者の売買行動がデータに直接反映されるという点はもう一つの特徴であり、分析をしていて面白い点です。(興味のある人はホームページにいくつかレポートがあるので見てみてください。)このような情報から株式市場の状態や市場の急変時に市場参加者がどのような行動をするのかの分析を行ってきました。これらの分析は、人手で分析を進めていくには限界があり、機械学習を用いて行っています。

その中で、いつも疑問に感じていることがありました。それはAIの研究がものすごいスピードで進展しているものの、実際に機械学習をビジネスに利用する際に生じる問題についての研究は発展途上にあるのではないかという点です。

例えば、一般的にデータ分析の結果を応用する際には、機械学習モデルへ実装し、利用してもらうという流れになります。モデルの開発側としてはそれまでに様々な分析を行っているため、モデルに対しての理解は十分に蓄積されていますが、これらの過程を経ていないモデルの利用者は納得して利用できるのでしょうか?

この機械学習モデルやAIへの信頼という問題は、それまでモデルを開発してきた経験から疑問に思っていたことです。上記の通り機械学習を分析に利用していく中で、その結果をどのようにすれば安心して使えるのかについて、常に葛藤を抱えていました。また、AIの社会実装が進んでいく中で、この機械学習モデルやAIへの信頼という問題は注目されるようになってきているとも感じていました。そこで実際に上記の疑問に対して研究をしてみたいと希望し、今回スタンフォードの客員研究員になるチャンスを得ました。幸いにも前任者がいたこともあり、渡米の準備は特に問題もなくスムーズに進みました。

2 取り組み

現在、私はCarlos Guestrin先生の研究室に所属しています。先生は信頼できる機械学習モデルにはどのようなことが求められるのかについて研究されています。解釈可能なAIという分野はその一例で、モデルの利用者から見れば、AIが出した結果がどのような理由に基づいているのか分かっていれば、安心してモデルをAIが利用できるようになるということです。そこで週次のゼミに参加し、他の学生とコラボレーションしつつ、研究を進めてきました。このゼミには教授からわたしのような客員研究員、ポスドクから博士課程の学生まで計20人くらいが参加しています。

これと同時並行で、自分の研究を進めてきました。現在はAIの解釈可能性について既存の手法を調べ、その特徴についてだいたい把握できたかなと思っています。これからは、AIの解釈可能性という問題の性質上、どのような問題に適用されるのかと切り離して議論することができないため、この点を整理しつつ研究を深めていこうかなと考えているところです。

3 日常生活

(1)研究環境

スタンフォード派遣からほぼ半年が経過しましたが、派遣を通じてこれまで感じたこと書いてみます。上述した通り私は週次のゼミに参加しているのですが、参加者は非常に積極的で、素朴な疑問であっても発言し、その発言がきっかけとなって議論が交わされます。他者の意見を聞き、議論していくという土壌が備わっていると感じました。また、あるテーマについて学生と協働していますが、ゼミのための準備の打ち合わせでも毎回意見が飛び交い、刺激的な時間を過ごしています。自分の思ったことがうまく伝えられずに、ストレスが溜まっていることも度々ありますが。。。

わたしの周りの学生はほとんど他の研究室と掛け持ちをしているようで、毎日忙しいようです。ミーティングで集まったとき、学生と自身が抱えているプロジェクトについて雑談をします。話を聞いているとゼミでの研究とは結構距離のあるテーマに取り組んでいたりして、驚いたこともあります。しかし、学生のうちに色々な経験ができるため羨ましい環境であると感じました。うまく自分の研究に巻き込んで、彼らの経験をうまく吸収してできるようにしていくことが今後の課題ですかね。。。

(2)日本とのコミュニケーション

わたしは、日本とのミーティングにも参加しています。スタンフォード大学のあるカリフォルニア州はサマータイムだと16時間の時差があり、日本の朝9時がカリフォルニアでは前日の夕方5時という状態。一日大学で過ごしてから、自宅に戻ると日本でのミーティングが始まるという生活です。幸い日本での業務はほとんどなく、ミーティングは自分の活動報告が主であるため負担感はありませんが、いまだにスケジュール調整をするときに日付で混乱してしまいます。

(3)そのほか

アメリカでの物価についてよくニュースを目にします。実際にこちらに来てみて、家賃と外食は驚くほど高いと感じました。家賃は避けようがないですが、食事は専ら自炊にして生活費を抑えています。そして、幸い日本食材を扱うスーパーが近所に複数あり、よく利用しています。日本に帰国する頃には料理は上達しているでしょう。

これから学会が多く開かれるシーズンになります。いつくかの学会に参加し情報収集を進めていくつもりです。いずれこれらについてもご紹介できるでしょう。それでは。