過去に発行した論文誌「MTECジャーナル」をご紹介いたします。
著者 | 八木 恭子(秋田県立大学)・高嶋 隆太(千葉工業大学) |
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タイトル | 転換社債による資金調達と最適投資 |
要旨 |
本論文では, 転換社債を発行することで, 投資における資金調達をする企業の最適投資政策を調べる. 企業価値を最大にするようなクーポン支払いを求める最適資本構成の下で, 株式価値, 普通社債の価値, 転換社債の価値, 投資オプションの価値, 倒産の閾値, 転換の閾値, 投資の閾値, 最適なレバレッジ率を考察する. 最適資本構成の下では, 投資を遅らせて, 高いクーポン設定で資金調達をする. すなわち, レバレッジをかけて, 転換社債をより多く発行するため, 株式価値は減少し, 倒産が早まる. さらに, 転換オプションの価値もまた減少し, 転換は遅くなる. 数値実験を通じて, 転換社債の発行が投資及び資金調達に与えるさまざまな影響について分析する. |
著者 | 林 匡史(三菱UFJ信託銀行) |
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タイトル | リスク鋭感的ポートフォリオ最適化とダウンサイドリスク |
要旨 |
本稿では資産価格過程がある線型確率ファクターの影響を受けるという仮定のもと,投資家のポートフォリオ価値成長率と,ポートフォリオのリスクとを考慮した連続時間期待冪効用最大化問題,すなわちリスク鋭感的ポートフォリオ最適化問題を考える.この問題を解く(最適投資戦略を求める)にあたってはBellmanの動的計画原理を適用して得られるHamilton-Jacobi-Bellman方程式(HJB方程式)と,これに付随して得られる代数リッカチ方程式を解く必要がある.確率ファクターが一次元の場合は,適当な条件を課すことで最適投資戦略の明示的記述が可能となる.本稿ではこの点についての結果を述べる.また,本問題と密接な関係のある最適成長ポートフォリオ, 部分ケリーポートフォリオ(fractionalKelly portfolio),リスク鋭感的ポートフォリオ最適化問題の応用としてポートフォリオインシュアランス, ドローダウン制約の適用や大偏差制御などにも言及する. |
著者 | 佐藤 賢一(MTEC) |
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タイトル | イールドカーブファクターを利用した通貨アロケーション |
要旨 |
本稿では,各国のイールドカーブから得られる情報を利用した,通貨アロケーションを検討した.短期金利の高い通貨を選好する戦略は広く議論されているが,中長期金利の水準・変化・傾きなど(イールドカーブフアクター)にも,アロケーションの策定に有益な情報が含まれていることを示す.これらのファクターは短期金利とは異なる情報を含んでいるため,短期金利だけでなく複数のイールドカーブファクターを組み合わせることで,アロケーションのパフォーマンスが安定化することを示す. |
著者 | 瀬古 進(MTEC)・鈴木 淳生(名城大学) |
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タイトル | ジャンプをもつ拡散過程の下でのゲーム型ロシアンオプションの解析的性質について |
要旨 |
本論文の目的は,二重指数ジャンプ拡散過程の下で,ゲーム型ロシアンオプションの解析解とオプション価格が満たす解析的な性質を導出することである.ゲーム型のロシアンオプションでは,オプションの売り手が早期に権利行使するときに買い手に支払うペナルティがある一定の水準に達すると,売り手は権利行使しないことが最適となる.このとき,ゲーム型ロシアンオプションは通常のロシアンオプションに退化することを示した. |
著者 | 田中 秀幸(MTEC) |
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タイトル | 計算ファイナンスにおける多次元問題について |
要旨 |
本稿では計算ファイナンス(computational finance)における多次元デリバティブ計算のためのアルゴリズムについて最近の成果を報告する.特に,sparse grid法と呼ばれる疎な離散点上での多次元線形補間法とその応用について調査する.さらに, sparse grid法と確率微分方程式の離散近似法を組み合わせた新手法を提案し, 3次元の具体的なモデルでの数値検証を行うことで,その精度と計算速度について考察する. |
著者 | 山本 零(MTEC) |
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タイトル | 数理計画法を用いた投資指標の合成方法の検討 |
要旨 |
投資銘柄の魅力度を測定する投資指標の構築は,ポートフォリオの運営を行う際に,そのパフォーマンスを決定する最も重要な要素の1つであり,作成する投資指標の有効性だけでなく,運営の行いやすさ,コストマネジメン卜も考慮して構築方法を検討する必要がある.本研究では,マルチファクターモデルを利用した投資指標合成モデルについて,採用指標数制約,自己相関制約という実用的な制約条件の下でIC(Information Coefficient)を最大化するモデル構築方法を定式化した.また国内株式市場で有効性を検証した結果,本研究で構築した投資指標を用いることで,制約条件を考慮しないモデルに比ベ, 売買コストを低下させ,ポートフォリオのパフォーマンスを改善させる効果があることを実証した. |