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創立20周年記念論文集[MTECジャーナル特別号]

過去に発行した論文誌「MTECジャーナル」をご紹介いたします。

「フィナンシャル・テクノロジーの過去・現在・未来」(2008年1月)

所属は当時

タイトル 第I部 レビュー論文集
タイトル 巻頭論文
著者 久保田 敬一(武蔵大学)
タイトル ファイナンス論・金融工学20年の発展:MTECの発展とともに
タイトル 第I部の1 株式・債券投資における理論と実務
タイトル 第1章 はじめに
著者 橋口 浩隆(MTEC)
タイトル 第2章 アセットプライシング
著者 野崎 真利(MTEC)
タイトル 第3章 バリュエーション
著者 山内 英一郎(MTEC)
タイトル 第4章 債券運用戦略
著者 山本 零(MTEC)
タイトル 第5章 ポートフォリオ最適化
タイトル 第I部の2 金融リスク計量手法の進展
タイトル 第1章 はじめに
著者 瀬古 進(MTEC)
タイトル 第2章 市場リスク
著者 川口 宗紀(MTEC)・永見 健次(MTEC)
タイトル 第3章 信用リスク
著者 佐藤 賢一(MTEC)
タイトル 第4章 オペレーショナルリスク
著者 加藤 恭(MTEC)
タイトル 第5章 統合リスク管理
タイトル 第II部 研究論文集
タイトル 巻頭論文
著者 森平 爽一郎(早稲田大学)
タイトル イベントリスクに対するデリバティブズ価格決定
要旨

非負の整数値であらわされるようなイベン卜リスクをもつ原資産とそのデリバティブズ契約に関する価格決定モデルを提案した.企業や個人融資のデフォル卜件数,一定規模以上の地震や台風の件数,ある一定以上あるいは以下の気温日数などはこうしたイベン卜リスクを有する.イベン卜リスクは,非負離散型確率分布を考えなければいけない.また,そうしたリスクが市場で取引されていない非完備市場資産であることにより,良く知られたブラック=ショールズモデルを導出するために用いた価格決定原理を用いることはできない.われわれは,この問題に対して,エッシャ一変換を適用し,イベン卜リスクを有する保証契約の原資産,先渡し,(コール)オプション契約の,特定の離散分布に依存しない価格決定モデルを示し,さらに,イベン卜リスクがポアソン分布と負の二項分布に従う場合の価格決定モデルを示した.そして,信用リスクと天候デリバティブズに関する応用の可能性について実例を用いて示した.

タイトル 論文
著者 竹原 均(早稲田大学)
タイトル 第1章 コントラリアン戦略, 流動性リスクと期待リターン:市場効率性の再検証
要旨

本研究では,過去の実現リターンに基づくコントラリアン戦略,および市場流動性と期待リターンとの関係について,アセットプライシングモデルの選択と効率的市場仮説の視点から再検証を行う.米国市場に関しては,Fama and French (1993)の3ファクターモデルに,過去1年の実現リターンに基づくモメンタム戦略からのリターンを追加したCarhart(1997)の4ファクターモデル, さらにPastor and Stambaugh(2003)による流動性ファクターを追加した5ファクターモデルが,実証研究上のベンチマークとして認知されつつある.しかしながら,モメンタム/コントラリアン戦略からのリターンスプレッドをリスクファクターとして扱うことの妥当性は,日本市場において,これまで検証されていない.また摩擦が存在する状況での裁定と資産価格評価について, プライシング理論の体系は完全には整備されていない.そこで,本研究ではコントラリアンファクタ一,市場流動性ファクターをリスクファクターとして扱うことの適否を検討するとともに,これらのリスクファクタ一候補をFama-French3ファクターモデルに追加したときのモデル説明力の変化状況を確認する.さらに,個別銘柄のリスク調整後リターンを被説明変数,Fama-French3ファクターラコントラリアン,および市場流動性ファクターに関連する財務特性を説明変数として, Fama and MacBeth(1977)型回帰分析を適用することにより, 財務特性による株式リターンの予測可能性を検証する.実証の結果,流動性特性としての売買回転率に予測可能性が認められ,市場流動性ファクターをリスクファクターの候補とすることに問題が残ることが明らかとなった.一方,リスク調整後リターンを過去の実現リターンによって予測することは不可能であり,さらにベータの時間変化を許容した条件付モデルのもとでは,純資産時価総額比率によってもリスク調整後リターンは予測不可能であることが示された.したがって,本研究での実証分析の範囲内においては,バリュー株アノマリ-,およびコントラリアン戦略の有効性は,株式市場の効率性に対する批判の根拠とは成り得ない.

著者 関根 順(京都大学)
タイトル 第2章 均衡価格過程から導出されるリスクプレミアムについて
要旨

He and Leland (1993)の均衡価格過程に関する結果をより一般的な設定の下で述べ直す.具体的には,(i)均衡価格過程から導出されるリスクプレミアムを危険資産価格の限界効用の逆数に関するマルチンゲール表現を使って表す.(ii)更に,このリスクプレミアムに関する,相対リスク回避度や状態変数のヤコビ行列過程を用いた別表現を示し,均衡価格過程のある“平均回帰性”を相対リスク回避度の単調減少性と関連付ける.

著者 中川 秀敏(東京工業大学)
タイトル 第3章 トップダウン・アプローチによるマルチ・ダウングレード・プロテクションの評価
要旨

本稿では,複数企業のデフォル卜・リスクのモデル化のためにGiesecke and Goldberg (2005)が導入したトップダウン・アプローチのフレームワークを用いて,ポー卜フォリオの格付推移リスクを表現する新しいモデルを提案する.また具体的な応用例として,格下げが発生した時点で何度でも支払いが発生する「マルチ・ダウングレード・プロテクション」というクレジッ卜・デリバティブの価格付けを行うことが,本稿の直接的な目的である.まず,自励型のデフォル卜強度過程を,ポー卜フォリオ内の特定の格下げ発生の強度過程と見なすモデルについて,格下げ時の支払いが定額の場合と契約の残存期聞に依存する場合の二種類のマルチ・ダウングレード・プロテクションを考え,それぞれのプレミアム評価式を明示的に与える.次に,一般的な格付推移の状況をトップダウン・アプローチに基づいてモデル化する.具体的には,まずポー卜フォリオ内で何らかの格付推移が発生する状況を自励型過程による格付発生の強度で表現し,どの格付からどの格付に推移したのかについては,ポー卜フォリオ内の格付分布,デフォル卜可能性および格付推移の履歴に依存して表現するモデルを提案する.最後に,格付推移モデルにおける格下げ発生のシミュレーションのアルゴリズムを記述し,定額支払いのマルチ・ダウングレード・プロテクションのプレミアムを数値的に算出する.

著者 大高 正明(MTEC)・川口 有一郎(早稲田大学)
タイトル 第4章 Bakshi=ChenモデルによるJ-REIT価格の分析
要旨

本研究では,J-REITの決算情報,市場価格から,J-REIT投資に資する情報を抽出することを目的とする.J-REITの予想国当利回りは,銘柄ごとの割安度を判断するための投資情報として簡便かつ重要な指標のひとつである.本稿では株式バリュ工ーションモデルの一つであるBakshi=Chenモデルを用いることで,J-REITの予想配当利回りを,ボラティリティ等の各種モデルパラメータと分配金の変動に対するリスクプレミアム,評価時点における金利によって解析的に表現できることを示す.また予想配当利回りからデフォル卜フリーの金利要因を取り除いた「期待成長率控除後リスクプレミアム」を投資指標として考え,市場価格から逆算して求めた同指標についてうその水準を決定するJ-REIT属性の探索を行うとともに,同指標を用いた運用戦略の可能性について考察する.さらにシナリオシミュレーションによって各モデルパラメータ,状態変数の変化がREITの価格にどのような影響を与えるのか考察する.

著者 磯貝 明文(MTEC)
タイトル 第5章 MBPモデルとリスクバジェッティング
要旨

マルチベンチマークポー卜フォリオ(以下, MBP)モデル(磯貝(2004))は,リスクバジェッティングの概念に整合的なモデルである.すなわち,複数のセグメン卜別に情報を有するフアンドのポートフォリオ構築において,超過収益が見込めるセグメン卜に適切なリスク予算を割り当てるととによってポー卜フォリオ全体の運用効率を高められるモデルとしている.本稿では,MBPモデルのインプッ卜である各セグメン卜のリスク予算の与え方について言及し,与えられたリスク予算の下でのMBPモデルの特性を考察する.

著者 瀬古 進(MTEC)
タイトル 第6章 動的なプロテクションをもつファンドと有限期間ロシアンオプションについて
要旨

本論文の目的は,動的なプロテクションをもつファンド(Dynamic Fund Protection)の1つの応用例として満期が有限であるロシアンオプションを考え,その価格と最適行使境界の推定方法について述べることである.動的なプロテクションをもつファンドとは,満期までのすべての時刻において事前に決められた閾値(フロア-価格)をファンド価格が下回らないことを保証したものである.一方で,ロシアンオプションとは任意の時刻で権利行使することのできるアメリ力型のオプションであり,権利行使したときにその時刻までの危険資産価格の最大値をペイオフとして受け取ることのできるオプションである.本論文では,動的なプロテクションをもつファンドの価格式をロシアンオプションの価格式に書き直すことができることを示し,危険資産からの配当の有無と満期の有無による,動的なプロテクションをもつファンドとロシアンオプションについての権利行使の可能性を明示する.また,満期が有限の下でロシアンオプションの価格と最適行使境界を推定する方法について述べ,数値例を提示する.