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MTECジャーナル

MTECジャーナル 第24号(2012年11月)

過去に発行した論文誌「MTECジャーナル」をご紹介いたします。

所属は当時

著者 太田 亘(大阪大学)
タイトル 高頻度取引が市場の流動性に与える影響:サーベイ
要旨

情報処理技術の発展により,取引参加者が高速に売買を繰り返す高頻度取引を利用するようになるとともに,取引所はそのような取引が可能となるよう執行システムを高速化している.本稿では,高頻度取引が市場の流動性や価格発見にどのような影響を与えるかについて分析した既存研究を概観する.米国や欧州などの経験は,高頻度取引は市場に流動性を供給するとともに価格発見に寄与しているが,クラッシュ時の価格下落を増幅する可能性がある,というものである.

著者 後藤 順哉 (中央大学)・山本 零 (MTEC)
タイトル CVaR最小化と信用リスク判別モデル
要旨

本稿では 2 群判別のサポート・ベクター・マシン(SVM)と, ポートフォリオ選択モデルとして金融工学分野でも馴染みの深い条件付きバリュー・アット・リスク(CVaR)最小化との関係について, Gotoh and Takeda(2005) に基づき紹介する. 後半ではその基本アイデアを順序付きの多群判別に拡張する. 特に格付判別などの信用リスク判別を想定し, 財務指標と信用リスクとの単調性を考慮した場合, ℓ1 ノルムを採用することで変数選択を取り入れ, 判別超平面の推定問題を線形計画(LP)に帰着させる方法を提示する. 格付判別に適用した数値計算例によって, ある程度妥当な変数選択と判別性能が同時に得られることを示す.

著者 山内 浩嗣 (MTEC)
タイトル 拡張型スコアリングモデルと, 多目的GAを用いたモデルのチューニング
要旨

本研究では,拡張型の信用スコアリングモデルと,多目的遺伝的アルゴリズムを用いたモデルのチューニング方法を提案する.本研究で提案する拡張型のスコアリングモデルとは,スコア値の最低点と最高点を全指標で一律に定めた「標準化された配点表」と,二項目ジットモデル型など「任意の集計関数」を備えたものである.この拡張型モデルは,配点表によって財務指標と信用力の非線形構造を捉えることができる一般的なスコアリングモデル(標準型モデル)の特長に加えて,他の優れた信用リスクモデルの構造上の利点を取り入れることができる柔軟性を備えた,いわばハイブリッド型の信用リスクモデルである.本研究では,この拡張型モデルのチューニングを多目的最適化問題として定式化し,多目的遺伝的アルゴリズムによる求解法を提案した.実証分析では,拡張型スコアリングモデルと標準型スコアリングモデルなどを比較したところ,拡張型モデルは他のモデルよりも精度が高いという結果が得られた.また,二項ロジットモデル型の拡張型スコアリングモデルと, Neg-Log変換値などを入力値とした一般的な二項ロジットモデルとの比較においては,配点表による非線形変換が二項ロジットモデルの精度を高める上で非常に有益であることも示した.

著者 田代 雄介 (MTEC)
タイトル FFTを用いた高速・高精度なオペレーショナル・リスク計測アルゴリズム
要旨

バーゼル II における先進的計測手法では, オペレーショナル・リスク量は年間損失額の 99.9 % VaR として定義される. この VaR を計測するポピュラーな手法に損失分布手法(LDA)がある. LDA における実務的な課題の 1 つは, 1 件あたり損失額分布と頻度分布が与えられた条件下で, いかに精度よく VaR を計算できるかである. 本論文では, FFT(高速フーリエ変換)を用いて高速・高精度に 99.9 % VaR を計測するアルゴリズムを提案する. アルゴリズムは誤差解析に基づいて構築されており, 得られた解の精度が保証される. また, 本論文では提案アルゴリズムの VaR 合算への応用も考える. オペレーショナル・リスクはカテゴリごとの VaR の合算により算出されることが多く, VaR 合算も実務においては必要である. 本論文ではカテゴリ間の損失発生頻度が独立な場合だけでなく, 特定の相関がある場合についても VaR 合算方法を提案する.

著者 永見 健次 (MTEC)
タイトル LIBORマーケットモデルによる金利デリバティブのリスク分析
要旨

本稿ではLIBORマーケットモデルを用いて金利デリバティブ,特にスワップションについてリスク分析を行う. オプション満期が固定のヨーロピアンタイプと,行使時点を複数から選択できるパミューダンタイプでリスク特性の比較を行う価格感応度であるデルタ,ベガ,シータを計算し,モデルパラメータを変化させた時の変化の傾向を調べるまたモンテカルロ・シミュレーションで価格感応度を計算する方法として,計算負荷が比較的小さいフォワード近似法を取り上げる.そしてデルタの評価法についてフォワード近似法とアジョイント法の比較を行い,ベガの評価法に関してフォワード近似法と逐次法の比較を行う何れのケースでもフォワード近似法では過大バイアスが生じることを統計的検定で示し,理論的背景について考察する.また近年重要性が増しているカウンターパーティーリスクについて,スワップなどのエクスポージャー分布を調べる.他にマーケットモデルのマルチカーブへの拡張について最近の発展をまとめる