過去に発行した論文誌「MTECジャーナル」をご紹介いたします。
著者 | 関根 順(大阪大学) |
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タイトル | 長期金利のロバストな表現について |
要旨 |
連続時間金利期間構造モデルから計算される超長期金利 (期間を無限大にとった金利) に関心を持つ. その双対表現を解釈することで, 超長期金利はモデルパラメータ, 金利の値, 最適消費の成長率について最小化を行ったロバストな表現を持っていることが明らかにされる. 更に, アファイン型金利期間構造モデルやその混合モデルを例にとり明示的な計算を行う. |
著者 | 太田 浩司(関西大学)・近藤 江美(帝塚山大学) |
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タイトル | 経営者予想とアナリスト予想の精度とバイアス |
要旨 |
本研究では, 期中に公表される全ての経営者予想とアナリスト予想を用いて, その精度とバイアスについて検証している. なおアナリスト予想としては, 比較的中立な立場である出版社系アナリストによる東洋経済予想と, セルサイド・アナリストによる複数の予想の平均値である I/B/E/S 予想の 2 種類の予想を用いている. 結果は, わが国の業績予想では経営者予想が中心的な役割を果たしており, アナリスト予想は, 経営者予想の精度とバイアスに大きな影響を受けていた. また, アナリスト予想の中では, 中立的立場の東洋経済予想は, 経営者予想のバイアスをある程度認識しており, 期中を通じて経営者予想よりも楽観的バイアスの小さいより精度の高い予想を公表していた. 一方, セルサイド・アナリストの平均値であるI/B/E/S 予想は, むしろ経営者予想のバイアスを増大させており, 期中を通じて経営者予想よりも楽観的バイアスの大きいより精度の低い予想を提供していた. |
著者 | 山田 俊皓(MTEC)・高橋 明彦(東京大学) |
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タイトル | 確率ボラティリティモデルのもとでのインプライドボラティリティと離散バリアオプション価格の解析的近似法について |
要旨 |
本論文では, ファイナンスでのモデリングにおいてスタンダードになりつつある確率ボラティリティモデルのもとでのデリバティブスの価格やインプライドボラティリティの解析的近似法と数値例を紹介する. また, 離散バリアオプションへの応用についても扱う. |
著者 | 石谷 謙介(MTEC) |
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タイトル | Wavelet変換を用いた信用リスクの解析的な評価方法:Multi-Factor Merton Modelにおける高速計算法 |
要旨 |
多数の債務者からなる与信ポートフオリオの信用リスクの計算は,モンテカルロ法を用いることが一般的であるが, 最近ではより計算負荷の低い極限損失分布による方法やグラニュラリティ調整法など近似的な解析解を用いる方法が提案されている.しかし, これらの解析的手法は,債務者が少ない場合や与信が集中している場合に近似精度が悪化するという点や,信用力を表すモデルとしてMulti-Factor Merton Modelを用いると計算負荷が大きくなるといった問題点があるため,本論文では改善策として,Wavelet変換を用いた解析的な信用リスク計測手法を提案し,その有効性を示す. |
著者 | 荻原 哲平(MTEC) |
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タイトル | 高頻度観測データを用いた共分散推定手法について |
要旨 |
本稿では,近年その利用可能性に伴い注目されている高頻度観測データを用いたデータ解析,特に共分散推定手法に関していくつかの手法に触れ,その挙動を分析する.高頻度観測データ特有の推定上の問題である観測データの非同期性の問題を解消する推定量としてHayashi and Yoshida (2005)により提案された推定量についてサーベイしたあと,非同期観測下の最尤推定型の推定量を構築した.また,実際の数値計算上の負荷を減らすための工夫を紹介し, ”同期化”された推定量, Hayashi-Yoshida推定量と最尤推定型の推定量の挙動をシンプルなモデルを用いたシミュレーションにより比較した.その結果ヲ最尤推定型の推定量がもっとも予測誤差の標準偏差が小さいという,最尤推定量として望ましい性質を満たしていることが確認された. |
著者 | 野崎 真利(MTEC) |
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タイトル | 予想利益のバイアス補正とインプライド資本コストの推定 |
要旨 |
本論文では, Fama and French (2006) や Hou, van Dijk and Zhang(2010)によって提案された回帰モデルによる予想利益の推定方法を用いてインプライド 資本コストの推定を行い, 東洋経済予想のバイアス補正効果や実現収益率との関係性について比較検証を行った. 実証分析の結果, 回帰モデルにより推定された予想利益は, 東洋経済予想に対してバイアスを補正する効果があり, また推定した利益を用いて算出したインプライド 資本コストは, 東洋経済予想を用いて算出したインプライド 資本コストと比べて実現収益率との統計的な関係性が高まることがわかった. さらに, 回帰モデルから推定した予想利益と東洋経済の予想利益との差で定義した推定予測誤差は, 実現収益率の格差について追加的な情報をもたらすことを確認した |